地価公示 宮城県全体、11年連続上昇 被災地や仙台圏以外は下落

県内の用途別平均価格と平均変動率 〔注〕価格単位は1平方メートル当たり円。変動率は%

 国土交通省が22日公表した1月1日時点の宮城県内の公示地価で、全用途の平均変動率は11年連続で上昇した。仙台圏の住宅需要が底堅い上、新型コロナウイルスによる社会経済活動の制限が緩和され、上昇幅は昨年から拡大した。東日本大震災の被災地や仙台圏以外の地域は下落に歯止めがかからず、明暗を分けた。

 県内の調査地点は都市計画区域がない七ケ宿、色麻両町を除く33市町村の575カ所。県全体の用途別平均価格と平均変動率は表の通り。全用途は3・9%で、前年(2・7%)を1・2ポイント上回った。上昇は住宅地が11年連続、商業地は10年連続。

 前回と比較可能な継続地点565カ所のうち、上昇は386カ所(前年比14カ所増)で、仙台市が76%に当たる292カ所。下落は140カ所(12カ所減)で、仙台圏以外が117カ所で84%を占めた。横ばいは39カ所(4カ所減)。

 用途別では、住宅地が上昇284カ所、横ばい24カ所、下落95カ所。商業地は上昇91カ所、横ばい14カ所、下落42カ所。工業地は上昇10カ所、横ばい1カ所、下落2カ所だった。

 市町村別の全用途平均変動率は、富谷市の8・7%が最大。大和町6・8%、名取市6・6%、仙台市6・1%、利府町6・0%と仙台圏での伸びが目立った。

 下落率が最も大きいのは南三陸町の2・9%。川崎町2・8%、気仙沼市2・5%、村田町2・0%と続いた。

 仙台市は全5区で前年からプラスとなった。宮城野区7・9%、若林、泉両区6・4%、太白区5・6%、青葉区5・3%の順。

 同市では住宅地が上昇210カ所、横ばい4カ所、下落2カ所。商業地は上昇76カ所、横ばい2カ所、下落5カ所。工業地はネットショッピングの増加に伴う物流施設の需要から全5カ所で上がった。

<住宅地>富谷や大和、大幅な伸び 子育て世帯から人気

 22日発表の公示地価は、住宅需要が旺盛な仙台圏の中でも、北部が大幅に伸びた。仙台市泉区や富谷市南部より割安な富谷市北部、大和町が子育て世帯から人気を集めているとみられ、専門家は「東北6県の人口のうち仙台圏が2割を占め、面的な上昇が続いている」と指摘する。

 住宅地の上昇率トップ5は富谷市と大和町が独占した。1位と2位が富谷市北部の太子堂1丁目の13・8%(1平方メートル当たり4万3000円)、ひより台2丁目の13・7%(5万4000円)。大和町も、もみじケ丘1丁目の12・9%(6万5800円)が4位に入った。

 3位(13・6%)の富谷市富ケ丘2丁目の7万2000円、6位(12・7%)の仙台市泉区泉ケ丘4丁目の7万5500円と比べると手頃。調査を担当した西山敦不動産鑑定士(青葉区)は「富谷市北部や大和町は商業施設へのアクセスが良く、割安感もある。低金利や住宅ローン減税で住宅取得にいい環境が継続している」と分析する。

 東日本大震災の被災地や人口が減少する自治体では下落が止まらない。下落率の大きい10地点を気仙沼、大崎、南三陸3市町で占め、3市町の9地点で下落幅が前年より拡大した。

 西山氏は「人口の流出や高齢化で経済が衰退し、内陸、沿岸に関係なく下落傾向が続く。被災地では災害公営住宅の供給や土地区画整理事業に伴う移転需要が終わり、新しい人口の流入が少ない」と説明する。

<商業地>仙台駅東口周辺、急上昇 鳴子温泉など厳しく

 新型コロナウイルス対策の行動規制が緩和される中、22日発表の公示地価は、再開発が進むJR仙台駅東口周辺(仙台市宮城野区)で急上昇する一方、大崎市鳴子温泉など地方の観光地で下落傾向が続いた。

 県内の商業地で上昇率の上位3カ所はいずれも仙台駅東口で、18・8%の宮城野区榴岡4丁目(1平方メートル当たり117万円)、16・4%の若林区新寺1丁目(81万5000円)、14・9%の宮城野区二十人町(85万円)。

 公示地価の最高額は駅西口の青葉区中央1丁目の1平方メートル当たり438万円で、上昇率は2・3%。関係者によると、駅周辺の需要は安定しており、西口より地価水準が低い東口の地価は今後も上昇傾向とみられる。

 下落率の1位は大崎市鳴子温泉の5・5%で、前年より0・3ポイント悪化した。日本三景で知られる松島町松島でも8位の2・6%で厳しい状況が続く。

 調査を担当した西山敦不動産鑑定士は、東日本大震災の被災地でも下落率が改善しない一因として「復興道路として整備された三陸沿岸道の全線開通で仙台圏に人が流れる『ストロー現象』もみられる」と指摘した。