宮城の住宅地、商業地とも上昇率全国3位 地価公示 岩手の住宅地22年ぶりプラス

 国土交通省は22日、1月1日時点の公示地価を発表した。新型コロナウイルス禍の影響で弱含んだ地価は景気の緩やかな持ち直しにより、地方部でも上昇範囲が広がった。岩手県の住宅地は22年ぶりにプラスに転じた。宮城県の上昇率は住宅地、商業地ともに全国3位で伸びが続いた。

青森、秋田は下落率縮小

 東北6県の平均地価は前年比で住宅地がプラス1・4%、商業地がプラス1・0%。いずれも2年連続の上昇となった。

 各県と仙台市の平均地価と変動率は表の通り。住宅地は4県がプラスで、岩手の上昇は2001年以来。宮城は11年連続、山形、福島は2年連続のプラスとなった。青森、秋田は下落率が縮小した。

 前年から1・2ポイント伸びてプラス4・0%だった宮城は、従来通り仙台圏がけん引した。仙台市は1・5ポイント上昇し、5・9%。市中心部の需要は引き続き堅調で、周辺の富谷市(9・1%)、名取市(6・2%)に及んだ。

 ほか5県は、利便性に優れた県庁所在地を中心に伸びた。上昇率は山形市2・1%、盛岡市1・3%、秋田市1・2%と続いた。

仙台のオフィス需要堅調

 商業地は、宮城の上昇幅が1・4ポイント拡大の3・6%。オフィス需要が堅調な仙台市は6・1%で、市中心部の再開発計画を要因に地価の上昇が継続した。一方で繁華街・国分町の続落が響き、福岡市(10・6%)などに比べて上昇は緩やかだった。

 青森、岩手、秋田、山形は下落率が縮小した。福島は前年の横ばいから0・5%のプラス。再開発事業や行政主導の地域活性化策を背景として地価回復の流れが強まった。東日本大震災の沿岸被災地は人口減や高齢化の影響で下落が続いた。

 全国平均は住宅地がプラス1・4%、商業地がプラス1・8%。ともに2年連続で上昇した。

 東北の調査地点は1858カ所。福島県の7カ所は東京電力福島第1原発事故の影響で休止している。

[公示地価]地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が公表する1月1日時点の土地価格。一般の土地取引の指標となる。調査地点は全国約2万6000カ所。他に都道府県が7月1日時点の地価を調べる基準地価、国税庁が算出する主要道路沿いの路線価などの指標がある。

プロジェクト呼び水、不動産取引活発化

 【解説】東北の都市部にも「新型コロナウイルス流行前への回復傾向が顕著」(国土交通省)に表れた。仙台圏の一極集中は変わらないものの、各県庁所在地などで動き出した各種プロジェクトが呼び水となり、不動産取引を活発化させた。

 札幌、仙台、広島、福岡の「地方4市」を除く地方圏の住宅地が、28年ぶりに上昇に転じた。景気が緩やかに持ち直す中、商業地も3年ぶりに反転。仙台を擁する宮城以外の東北各県にも波及し、久々のプラス地点が登場した。

 住宅地が22年ぶりに上昇した岩手県で、2019年に岩手医大が移転した矢巾町は富裕層の住宅需要で4・0%伸びた。半導体関連の企業立地が進む北上市は1・7%の上昇。1・3%の盛岡市に限らず、産学に明るい材料がそろう。

 秋田市の商業地は0・9%で3年ぶりのプラスとなった。県全体は下落したが、市中心部の地域活性化に向けた試みが奏功した。

 昨年オープンした秋田市の文化施設「あきた芸術劇場ミルハス」、市中心部の目抜き通り「広小路」を歩行者天国にする事業などをきっかけに、波及効果への期待が集まる。秋田駅前地区のマンション開発をにらみ、既に不動産業者による用地の引き合いもある。

 少子高齢化に悩む地方が自らの魅力を高めようとする努力は、着実に変化をもたらした。半面、新型コロナ禍が緩んだ今は首都圏への回帰傾向が見られる。地価を下支えする人口の流出に歯止めをかけるため魅力ある街づくりに磨きをかける必要がある。(東京支社・吉江圭介)