2025年より4号特例が変わります

4号特例は、住宅不足の時代に供給量を確保するために設けられていました。しかし省エネや品質向上ニーズの高まりにより、2025年から変革されようとしています。施主側にとっては、適切な構造計算等が必須になるのは大きなメリットです。一方でハウスメーカーやリフォーム会社では、法改正に備えた適切な準備が求められます。

4号特例とは

4号特例とは「審査省略制度」のことで、建築士が設計を行う場合に構造関係規定等の審査が省略される制度です。「4号」とは建築基準法第6条第1項第4号に定められた木造住宅等が該当することから、住宅業界に深く関係しています。

2025年、4号特例が縮小|国土交通省

https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf

2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。これにより、2025年より建築確認・検査対象の見直しや4号特例の縮小が行われる予定です。

具体的な法改正の内容については、下記2点にまとめられます。

①「建築確認・審査」「審査省略制度」

https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf

まず「建築確認・検査」「審査省略制度」の対象範囲が変わります。

改正前は木造2階建・木造平屋建といった建物は「4号建築物」に区分され、審査が省略されていました。これは建築確認の簡素化や合理化を図ることが目的で、「建築士が設計を行う場合」という条件の下に適用されています。

しかし改正後は4号が無くなり、「新2号建築物・新3号建築物」の2種類に区分されます。「新2号建築物」は木造2階建・木造平屋建(延べ面積200㎡超)で、審査省略の対象外となります。「新3号建築物」には木造平屋建(延べ面積200㎡以下)が該当し、こちらは審査省略が継続されます。

②構造・省エネ図書の提出

https://www.mlit.go.jp/common/001500388.pdf

今回の法改正では、「住宅を含む全ての建築物について省エネ基準に適合すること」も義務付けられます。

「新3号建築物」では従来の4号と同様に「確認申請書・図書」の提出が求められます。一方で「新2号建築物」は確認申請書・図書の他に「構造関係規定等の図書・省エネ関連の図書」も新たに提出が必要になります。

なぜ4号特例を縮小?|背景と理由

ここでは、4号特例が縮小されるに至った経緯についてまとめています。

①省エネ基準の厳格化

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000103.html

「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」では、2050年カーボンニュートラルに向けた省エネ化が定められています。

住宅に関しては、全ての新築住宅で「省エネ基準適合」が義務付けられる予定です。省エネ化では断熱材・省エネ設備の搭載が必要になることから、建物の重量化が進んでいます。これにより壁量が不足するケースもあり、安全性が保てなくなっているのです。

▼省エネ住宅について詳しくは、下記記事をご覧ください。
省エネ住宅の基準|2025年に全面義務化

②倒壊リスクの回避

これまで4号特例があったことにより、2階建て以下の木造住宅では構造計算をしなくても問題ありませんでした。そのため構造計算・壁量計算が十分でない可能性もあり、安全性が保たれないリスクがあるのです。

従来までは建築士のモラルを信頼した制度となっていましたが、「経験と勘」に頼っていては建物の品質が保てないという課題があります。そのため法改正により、厳格化が行われることになっています。

4号特例廃止の影響は?|ハウスメーカー・リフォーム業者

ここでは、4号特例廃止の主な影響についてご紹介します。2025年4月に施行予定となっており、早めの対策が求められるでしょう。

設計者の負担増

4号特例が廃止されることで、多くの木造住宅で構造計算・壁量計算が必要になります。これにより業務量が増え、設計者の負担も増えてしまうと考えられます。

最近では省エネ化により「太陽光パネルの設置や断熱性能の向上」が求められており、計算も複雑化している傾向があります。

住宅価格の上昇

4号特例の廃止で、従来見逃されていた構造強度不足が発見される可能性が高まります。補強のために必要な建築資材が増えることで、建築価格も上がってしまうかもしれません。

また業務量が増える分、人件費も加算される可能性が高いでしょう。